プロバビリティ・サン@ナンシー・クレス [SF]
『プロバビリティ・ムーン』にはじまる3部作の2作目。
「世界(ワールド)」と呼ばれる惑星の山中で発見された謎の人工物が、地球人の敵である異星種族「フォーラー」との戦いにおいて、戦局を大きく左右するような防御兵器でもあり、攻撃兵器ともなりうるものであることが分かってきて、これを地球へと運ぶ作戦が発動された。
一方、世界(ワールド)人は、この人工物が地下に存在する環境下で進化してきたことから、永い間その影響を受けてきたことにより、ある種のテレパシー能力のようなものを身につけていた。これを彼らは「共有現実」と呼んでいる。
したがって、この人工物を地球人が宇宙空間に持ち出したことにより、世界(ワールド)人たちは「共有現実」を失うことになり、その社会に大きな混乱を引き起こすことになった。
世界(ワールド)人の起源とされる〈はじまりの花〉とは何か?、「フォーラー」は何故執拗に地球人に攻撃を仕掛けてくるのか等々、いくつもの謎をはらんだまま、物語は最終巻である『プロバビリティ・スペース』へと続く。
「確率子」とか「カラビ=ヤウ空間」の説明が出てくる最後のあたりは、ハードSFという感じでなかなかすんなりとは理解できなかった。
今回の物語の中心人物の一人である物理学者のトーマス・カペロは、すぐに激昂する性格で、どうも好きになれなかったが、妻のかたきとして激しい憎悪の感情を抱いている「フォーラー」の捕虜との間で、筆談によりコミュニケーションを図り、人工物の謎を解明していくあたりは面白かった。
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