SSブログ
前の10件 | -

HELLO WORLD [SF]

一般的にSFにおいては、時間旅行により過去の自分と関わりを持つことは、タイムパラドックスを引き起こしかねないため御法度とされているが、本作はある仕掛け、あるシチュエーションによりそれを回避し、あまつさえ、積極的に過去を改変しようとする。
未来から来た自分(ナオミ)が過去の自分(直実)に恋愛の手ほどきをするなどという何だかラブコメ的展開は、ナオミの真の目的が明らかになったところで急転直下、世界崩壊の危機へと転じる。
可能な限り冒険を避けてきたという主人公の直実が、彼女である瑠璃のために危険へと身を投ずる展開は、映像にすると手に汗握るものとなっているのだろうことは想像に難くなく、映画の公開に期待感が増す。
そして、「この物語( セカイ)は、ラスト1秒でひっくり返る」というアニメ映画のCMのとおり、ここまで語られてきた物語がラストでひっくり返る段になって、なるほど、そういうことだったのか!と素直に驚く。
その小気味よさは野﨑まどの面目躍如といったところだろう。
HELLO WORLD (集英社文庫)

HELLO WORLD (集英社文庫)

  • 作者: 野崎 まど
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2019/06/21
  • メディア: 文庫

タグ:アニメ
nice!(0)  コメント(3) 
共通テーマ:

ひなた弁当 [小説]

突然のリストラにより会社を追われ、徐々に生活が荒んでいく主人公の姿は読んでいても胸が痛む。


そんな主人公が始めたのは地産地消、いや、地元に自生している植物や川魚などの食材を用いた弁当屋だった。『ひなた弁当』とは良いネーミング。


理不尽な仕打ちを受けた元の会社に対するリベンジに執念を燃やすのではなく、まったく新たな世界に挑み、自ら窮地を乗り越える姿に清々しさを感じる。


でも、わざわざ辞めさせられた会社に出向いて弁当の営業をかけた時にはよせばいいのにと思ってしまった。それが唯一リベンジのようにも思えたが、本人にはそんな意識はなく、純粋に注文販売をさせてもらえないかというビジネスチャンスを求めての行動だったのがまた良い。


人に裏切られ、会社・同僚との縁を強制的に断ち切られた主人公を救ったのが何気ない人の縁だったというのが逆説的な寓話のようだ。


世の中、利己的な心では気づけないことが多いのかもしれない。

nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:

文庫マークの木のしおり [プレゼント]

岩波文庫 読者プレゼントである「文庫マークの木のしおり」が届いた。


IMG_0782.JPG


といっても、岩波文庫の創刊90年記念フェア「私の好きな岩波文庫90」の帯についている応募券3枚を送ると、必ずもらえるものなのだが。


とてもシンプルな造りの品だけれど、使用されている九州産くすのきが良い香りを放っている。


使っているうちに紛失してしまいそうで怖いが、愛用させていただこう。

nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

彼女と彼女の猫 [コミック]

 主人公のOL美優と彼女に拾われ、チョビと名付けられた猫の日常は、一見するとどこにでもあるような極ありふれたもの。

 彼女のことが大好きなチョビは、彼女との暮らしに満足しつつも、母親の再婚や仕事上のミスなどで寂しさや焦りを感じ、少しずつ傷ついていく彼女の心の変化を敏感に感じ取り、その身を案じますが、猫である故にどうすることもできないもどかしさを感じる。

 ある日、いよいよ煮詰まった彼女が家を出て行ったときには、チョビがその所在を探し当てるという奇跡を起こす。まぁ、この奇跡にはタネがあったのだけれども(笑)

 あまり多くを語らず、静かに綴られる彼女と猫の物語に好感を覚え、さすが新海誠の作品だと感じた。『君の名は。』はいろんな情報をこれでもかと盛り込んだ作品だと本人がインタビューで答えていたが、逆にこれは、引き算の作品のような気がした。

 猫が起こす奇跡ということで、個人的にはちょっと「通い猫アルフィーの奇跡」を彷彿させた。

彼女と彼女の猫 (アフタヌーンKC)

彼女と彼女の猫 (アフタヌーンKC)

  • 作者: 山口 つばさ
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2016/08/23
  • メディア: コミック

 


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

エジプト十字架の謎 [ミステリー]

 〈国名シリーズ〉第5作である本作は、「T」の文字をモチーフとした連続殺人事件にエラリー・クイーンが挑む。私にとってはおよそ30年ぶりくらい再読となる。

 したがって、ストーリー自体はすっかり忘却の彼方へと追いやられているため、新鮮な心持で読み進めることができたが、エジプト十字架(タウ十字架)をモチーフにした殺人事件だというエラリーの当初の見立てが誤りだったということだけは記憶に残っていた。

 エラリーをして「ここまでこんがらがった事件は初めて」と言わしめた本事件だが、終盤の推理が終盤の推理が見事なくらいにシンプル過ぎて、唖然としてしまった(笑)連続殺人の捜査状況は芳しくなく、犯人の掌の上で踊らされている印象は否めなかったエラリーだったが、最後に一発逆転サヨナラホームランを放ったかのように鮮やかな名推理。

 アメリカ大陸を縦断する大追跡劇の末の犯人確保は、エラリーものとしては珍しい大活劇で、さながら「エラリー・クイーンの冒険」といった感じだった。一方で、ホテルに伝言を残しつつの追跡劇に時代性も感じる。今なら携帯ですぐに連絡が取れるわけだが・・・。

 でも、鑑識などによる科学的捜査が進んでいる現代であればまず起こりえない事実誤認も、この時代ならではのトリックとして十分楽しめた。

 それにしても、エジプト十字架を持ち出して、暴走気味の推理を展開するエラリーを時に諫め、時に叱咤激励して捜査の軌道修正させるあたり、かつての恩師ヤードリー教授とエラリーのコンビは、クイーン父子に勝るとも劣らない名コンビなのではなかろうか。

 

エジプト十字架の謎【新訳版】 (創元推理文庫)

エジプト十字架の謎【新訳版】 (創元推理文庫)

  • 作者: エラリー・クイーン
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2016/07/21
  • メディア: 文庫


タグ:ミステリー
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

献本プレゼント [献本]

 会社から帰宅すると、郵便受けに私宛の荷物が届いていた。心当たりがないので首をひねりながら開封すると、中身は読書感想サイト「本が好き!」から届いたエラリー・クイーン『エジプト十字架の謎』だった。

 先日、献本プレゼントの案内メールが来ていたので、何の気なしに応募したのだが、見事当選したもの。確か当選者は5名という募集内容で、とても当選するとは思っていなかったので、喜びもひとしお。

 クイーンのこの作品は、遙か昔に読んではいるが、その内容はすっかり忘却の彼方へと飛んでいってしまっているので、新鮮な気持ちで読むことができる。

 それにしても、 台風接近による大雨の中、届けられたらしく、外装が濡れてよれた状態だったので、内容物が無事か心配になったが、本自体はビニールに包まれていてセーフ!事なきを得て良かった(笑)

unnamed.jpg

エジプト十字架の謎【新訳版】 (創元推理文庫)

エジプト十字架の謎【新訳版】 (創元推理文庫)

  • 作者: エラリー・クイーン
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2016/07/21
  • メディア: 文庫

 


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

通い猫アルフィーの奇跡

 飼い主の死とともに、これまでのような安穏とした生活を送れなくなると感じたアルフィーは、自由を求めて家を出て、野良猫となる道を選ぶ。でも、それまでの安全で快適な飼い猫の座とは異なり、厳しい生存競争に晒される現実に疲弊し、孤独に耐えきれず、「家族がほしい。愛情と安心感がほしい」というアルフィーの願いは悲痛な叫びにも似ている。

 そこで、彼は、二度とひとりぼっちになるという憂き目に遭わないように、いくつかの家を行き来する通い猫となる決意をする。通う家庭は4軒。それぞれに何かしらの問題を抱えていると感じた彼が、猫なりにその解決を図り、新しい家族を作ろうともがく姿が涙ぐましいけれども、猫ゆえに人間と充分なコミュニケーションが取れず、そのジレンマにやきもきもする。

 猫目線で見ると、人間って、かくも可笑しくも愚かしく、理解不能で厄介な存在なのであろう。猫の性格からして、さぞうんざりしているのではないだろうか。アルフィーが時にすねて、プイッと出ていきたくなる気持ちもわかる!

 家族を守るために彼が最終的に選んだ行動には驚いたが、その健気な、そして固い決意に基づいた行動が引き起こす結末はまさに奇跡。

 猫は、その行動から人生を達観し、醒めた目で世の中を見ている存在のように感じていたが、実際にこのように人間をよく観察し、このように感じているとしたら、猫を見る目が変わりそうである。そして、意外に熱血漢なのかも。

 獲ってきたネズミや小鳥の死骸をプレゼントと称して玄関先に置く愛情表現は勘弁願いたいものだが(笑)

 

通い猫アルフィーの奇跡 (ハーパーBOOKS)

通い猫アルフィーの奇跡 (ハーパーBOOKS)

  • 作者: レイチェル ウェルズ
  • 出版社/メーカー: ハーパーコリンズ・ ジャパン
  • 発売日: 2015/09/19
  • メディア: 文庫

 


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

深泥丘奇談 [ホラー]

本格ミステリ作家である「私」が体験する怪異の数々。「それ」とか「あれ」という指示代名詞を多用し、全てが詳らかにされない勿体ぶり加減が、隔靴掻痒。主人公の言葉を借りればまさに「胡乱な気分に陥らざるをえなかった」(笑)

主人公は記憶障害に罹っているのか、「――ような気がする」という自信なさげなフレーズが随所に見られるのとは対照的に、「あれかもね」などと主人公が忘れている委細について訳知り顔の妻の存在が面白く感じられた。そのような曖昧模糊とした雰囲気作りが独特で、綾辻節炸裂という印象を受けた。

そして、もうひとつ、ほとんどの作品には「ちちち」とか「どどどっ」という音の表現が出てきていて、それが不気味な雰囲気を醸し出すのに一役買っている感じだった。

『悪霊憑き』という作品では、肝心の怪異が「*****」と伏字になっているのがもどかしく、その正体がとても気になったが、至極真っ当なミステリ作品の結末になっていたのには驚いた。これまた、本格ミステリ作家の面目躍如といったところか(笑)

全体的に恐ろしさよりも、ユーモア、そして時に爽快感すら感じさせるホラー短編集だった。

続編も刊行されているようなので、読んでみたい。

深泥丘奇談 (MF文庫ダ・ヴィンチ)

深泥丘奇談 (MF文庫ダ・ヴィンチ)

  • 作者: 綾辻行人
  • 出版社/メーカー: メディアファクトリー
  • 発売日: 2011/12/21
  • メディア: 文庫

 


タグ:ホラー
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

魔神館事件 夏と少女とサツリク風景 [ミステリー]

迷探偵・白鷹黒彦の事件簿第1弾。

嵐により外界から隔絶された洋館。そこで発生する連続殺人事件。舞台設定としては申し分ない。

圧倒的な暴力により殺害される被害者たちは悲惨です。とても大掛かりな、そして、極めて凶悪なトリック。想像の上を行く驚愕の犯人像に唖然とする。

ちょっと頼りない迷探偵・白鷹黒彦の暴走気味の推理。謎の多い博士・犬神清秀と天然キャラのその妹・果菜。彼らが程よいスパイスとなっているバカミス的ストーリーが、読んでいてハラハラさせられ、思いの外楽しかった。

私にとっては、村崎友著『風の歌、星の口笛』以来の大がかりなトリックに出逢ったという印象です。

 

魔神館事件  夏と少女とサツリク風景 (角川文庫)

魔神館事件 夏と少女とサツリク風景 (角川文庫)

  • 作者: 椙本 孝思
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2012/09/25
  • メディア: 文庫



nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

海外SFハンドブック [SF]

SFが好きだなどと公言しながらも、掲載されている作品群をながめると、読んでいない作品が多くて凹んでしまった。

でも、未読の作品が作品が多いということは、まだまだ読書する楽しみが残っているとポジティブにとらえることもできるかな(笑)

特に『ミニタリーSF略史』の章が興味深かった。ミニタリーSFの走りであるハイラインの『宇宙の戦士』などが陸戦主体の物語であるのに対して、90年代に入ると、宇宙艦隊ものが主流になり、21世紀に入ると、同時多発テロや中東での戦争を背景に、再び陸戦ものが増えてきたように、SFはその時々の時代背景反映して変遷してきているのだと気付かされる。

私にとっては、渺茫たるSFの海へと漕ぎ出す際の羅針盤の役目を担う座右の書となってくれそうである。

因みに、この本で紹介されていたジョージ・アレック・エフィンジャー著『重力の衰えるとき』が面白そうだったので、積読本に追加した。

海外SFハンドブック (ハヤカワ文庫SF)

海外SFハンドブック (ハヤカワ文庫SF)

  • 作者: 早川書房編集部
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2015/08/21
  • メディア: 文庫

 


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:
前の10件 | -

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。