い草のブックカバー
先日、読友さんからいただいたブックカバーを使い始めました。
このブックカバーはご覧のとおりい草製でして、新品の畳のような良い香りがします。
純和風なこの香りに癒やされて、読書も捗りそうな気がします(笑)
このような品をセレクトする読友さんのセンスには敬服します。
ありがとう!
仙台ぐらし [エッセイ]
初伊坂作品がこのエッセイ集となった。
本書前半は、「○○が多すぎる」というタイトルでつなげたエッセイ。北朝鮮のミサイル発射に怯え、本物のお化けや怪人が混じっているのではと、未だにお化け屋敷や戦隊物ショーを苦手とする著者は、かなりの心配性で、それだけでユニークな人物像が浮かんできました。そこには大好きな北杜夫のような気質も感じられ、親しみを覚えた。伊坂作品は未読だが、おそらくそのような気質が生んだ作品もあるのではないだろうか。
後半は、東日本大震災発災後の心情を綴ったエッセイや、被災地のボランティアをモデルとした短編作品が収録されている。今にして思うと、37年周期で発生してきた宮城県沖地震が、2015年くらいに起こるのではないかという著者の危惧が奇しくも的中してしまったわけで、心配性な著者のことを面白がるだけでは済まされないエッセイとなった。
杞憂を笑う者は天災に泣くということか。
空母いぶき 2 [コミック]
20XY年、ついに中国人民解放軍が事を起こす。しかし、その意図するところが見えない。
占領された島の島民が冷静に行動している様子に驚く。実際にはこうはいかないだろう。
そんな中、とうとう戦死者が出てしまう。先の大戦以来初の戦死者。
海上警備行動が発令された。報を受けた「いぶき」を旗艦とする第5護衛隊群も、先島諸島海域へと急行する。被戦闘地域の奪還と島民保護のために。
対峙する第5護衛隊群と中国人民解放軍の潜水艦。一歩も引かぬ両者。高まる緊張感にひりひりする。
一方、多良間上空ではRF4E偵察機の撃墜されるという事態に。
「防衛出動」の発令。「国民の生命と財産、そして領土のどちらも失うつもりはない!」という日本の垂水総理の不退転の決意。
果たして全面対決という最悪の事態になるのだろうか?
- 作者: かわぐち かいじ
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2015/09/30
- メディア: コミック
空母いぶき 1 [コミック]
書店で見かけて即購入した!
20XX年、中国工作員が尖閣南小島へ上陸する。その事件を契機に、推し進められるペガソス計画。それは日本初の垂直離着陸戦闘機F35JBを搭載した新型護衛艦「いぶき」を就役させるというもの。
近未来の日本は空母を保有するという新たな一歩を踏み出した。
「いぶき」を旗艦とする第5護衛艦群はアジア最強を目指すと言い放つ艦長の秋津一佐は腹に一物ありそうな人物。
その艦長の考えが読めず、また、中国にも何やら不穏な動きが見られる中、「いぶき」は船出する。
この緊迫感がかわぐちかいじ作品の真骨頂!今後の展開に期待感大です。
- 作者: かわぐち かいじ
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2015/09/30
- メディア: コミック
AQUA 1 [コミック]
読友さんからお借りしたコミック。惑星アクアがテラフォーミングされた火星のことだったのかと初めて知りました(笑)
アニメから入ったこの作品なので、「恥ずかしいセリフ禁止!」という藍華の口癖も、斎藤千和さんの声で脳内再生されて、懐かしさに浸りました。
アクアから見る夜空に浮かぶ地球と月の姿がとても美しく、印象的でした。
本巻に収められている「猫の王国」は、アニメでも大好きなエピソードでした。アリア社長はずいぶん大きな猫だと思っていましたが、火星猫という種でしたか!?ww
両手袋(ペア)から片手袋(シングル)に昇格した灯里に祝福を!
- 作者: 天野 こずえ
- 出版社/メーカー: マッグガ-デン
- 発売日: 2003/10/03
- メディア: コミック
赤い月、廃駅の上に [ホラー]
10作品の短編からなる有栖川有栖版『世にも奇妙な物語』という趣きです。そこはかとなく怖く、もの悲しく、時に心がほっこりする鉄道にまつわる怪談集です。
[夢の国行き列車]
えっ、これで終わり?と思ってしまいましたが、人生の悲喜こもごもを感じさせる切ない話。
[密林の国へ]
何処に連れて行かれるのか分からない汽車の旅。地続きではあるのに後戻りできないという焦燥!?
[テツの百物語]
鉄道マニア5人が集まって、百物語を行う(実際は5話だけれども)。その果てに現れたのは幽霊列車!?
[貴婦人にハンカチを]
哀しい話かと思いきや、最後は心がほっこりする話。
[黒い車掌]
死の直前に人生が走馬灯のように駆け巡るというが、列車の車窓に見知った顔の人たちが次々と映し出されると焦るだろうな・・・
[海原にて]
船にまつわる怪談じゃないか!と思いつつ読み進めると、海の上を走る新幹線の幻を目にする!?最後にさらりと明かされる日本が滅亡したという驚愕の未来!
[シグナルの宵]
双子の片割れと名乗ってまで、行きつけのバーに戻ってきたのは何故か?まだ現世に未練があったのか?
[最果ての鉄橋]
死者の増加に伴う輸送量アップのため(?)三途の川に鉄橋を架けて、列車を走らせるというアイデアにはくすりとさせられる。そして、鉄橋から落ちると現世に舞い戻る仕組み(?)には苦笑。
[赤い月、廃駅の上に]
鬼月と呼ばれる真っ赤な月の夜、街外れの駅には、「よろしくないもの」が降り立つという本作は、表題作だけあって、気合の入った恐ろしさ。「かつて誤解から『鉄道なんてくるな』と避けたせいで、便のよくないところに駅ができてしまった」という「鉄道忌避伝説」というものがあるとは知らなかった。
[途中下車]
厄災を免れたのは亡き妻の導きなのか・・・
つぼねのカトリーヌ The cream of the notes 3 [エッセイ]
森先生が提示する視点にはハッとさせられるものが多い。内容的には賛同できるもの、疑問を呈するもの様々であるが、6割以上はなるほどと頷けるので、考えるきっかけを与えてもらえるという意味で、森先生のエッセイは愛読している。
今回、一番印象に残ったのは、読書感想のネット投稿に関する苦言だった。それは、「思考を、熟成させることなく表に吐き出」すため「最初から他者を意識した言葉、他者を意識した思考しかできなくなる。このため、多くの人の言葉や思考が、充分に熟成していない、薄っぺらなものになっている」(P.89)というもの。
何とも耳が痛いことをおっしゃる。
つぼねのカトリーヌ The cream of the notes 3 (講談社文庫)
- 作者: 森 博嗣
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2014/12/12
- メディア: 文庫
神様ゲーム [ミステリー]
講談社ミステリーランド作品。
かつてこんな探偵がいただろうか?神様が探偵役だなんて、よくそんな反則技を思いついたものです。何しろ神様ですから、どんなことでもお見通し。いや、ヘタをすると自分の望むがままの結果を用意することもできるのかもしれない。超絶的探偵です。
事実のすべてを告げていないにしても、その言葉に嘘はない。推理も何もあってものではない。でも、そうは言っても、何かしらのトリックがあるに違いないと目を凝らして読み進めましたが、何とまさかのトリックなし?唖然、呆然(笑)。
芳雄少年が辿り着いた結論は筋が通っていますが、神様が下した天誅は・・・??
これは型破りのミステリー?いや、クライムノベルか?
後味がちょっと悪いのは、麻耶氏の持ち味でしょうか。
悪女は自殺しない [ミステリー]
「本が好き!」という献本プレゼントで頂戴した本作品。
物語の序盤で発見された男性の自殺体。彼はハルデンバッハ上級検事という警察サイドの大物だった。そして、ほぼ同時期に発見された若い女性の遺体。こちらも一見、自殺体のように見受けられるが、死亡した女性の名はイザベル。彼女は、周囲の多くの人々に疎まれていたという。つまり、殺される理由には事欠かない人物。巻末の解説によると、本作品の原題の直訳は「いけすかない女」とのことだから、ある意味、彼女こそが本作品の主人公といえるのかもしれない。
この二人の死に何かつながりがあるのか?というのが当面の謎なのだが、警察はしばらくの間、イザベルの死の真相究明に注力する。
登場人物が皆、嘘つきばかりで、そのために翻弄され、真実に近づいたと思っても、まだ何かパズルのピースが足らず、真相が解明されないもどかしさ。でも、ハイデルバッハとイザベルの死がつながったときに、事件は意外な広がりを見せていく。そのストーリー展開に引き込まれ、なかなか楽しめた。
それにしても、この著者の作品を読むのはこれが初めてであり、妙なユーモアというか、苦笑を誘うようなエピソードが所々に挟まれていたのだが、これがこの著者の作風なのだろうか?
その最たる例である、独断専行的に行動し、無実の人を犯人扱いして投げ飛ばされたり、挙句の果てには容疑者に襲われ、拳銃まで奪われたりしたオリヴァー主席警部という人物は、まったくのダメ人間のように私には映った。
これは『刑事オリヴァー&ピア・シリーズ』というシリーズものの第一の事件らしいが、その後の事件の捜査過程に不安を感じてしまった(笑)
- 作者: ネレ・ノイハウス
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2015/06/12
- メディア: 文庫
「知」の読書術 公開ライブ [読書法]
昨年に引き続き、東京国際ブックフェアに参加した。今回の目玉は、作家・佐藤優氏による講演『「知」の読書術 公開ライブ』を受講することだった。
この講演には、主催者側の予想を超える2500名もの受講申し込みがあり、急きょサテライト会場を設け、そこでは佐藤氏の講演の様子をカメラで写した映像を同時中継するということになったのである。
早めに会場に行って並ばないと、生の佐藤氏を見ることができないのでは、と焦った私は、ブックフェア等の探索も早々に切り上げて、開演の2時間ほど前には会場前に行って、並んでいた。
その甲斐あって、前から2列目の真ん中あたりという好位置のシートを確保することができた。これで佐藤氏のご尊顔を間近で拝むことができると、ワクワクしながら講演が始まるのを待っていると、佐藤氏はステージの左側に立って、正面のスクリーンにその姿が大写しされるスタイルだった。これには拍子抜けした(笑)
さて、その講演内容だが、今、話題の本ということで、『絶歌』を取り上げられた。犯罪者の書いた本を出すべきじゃないとなると、私自身も犯罪者だから、と笑いを取っていた。重罪犯とそれ以外を区別するのは難しいので、犯罪者の書いた本を出版することを止めるのは難しい。たとえ、太田出版が出さなくても、ほかの出版社が出しただろうと。
本として出版されるのは、編集者がこのテキストには力があると感じることと、出版社がこの本は売れると感じることが必要とのことで、『絶歌』にはそれがあったという。ただ、著者の元少年Aは、自分のことを被害者だと思っている節があり、引き続きケアが必要な危険な人物だとおっしゃっていた。
そして、『絶歌』と対比する作品として、窪美澄著の『さよなら、ニルヴァーナ 』を勧めていた。
今日講演を聞きに来られた人々は、「読書人階級」に属しているとおっしゃる。つまり、インテリゲンチアだと。自分の置かれた状況を、客観的に、自分の言葉で表現できる人のことだそうだ。
出版業界は、返本率が4割と、事業としては異常。佐藤氏は、返本されて断裁されないように、初版は抑え目にしているそうだ。
世の中には読むに値しないでたらめな内容の本がある。そういう本の見分け方は、真ん中あたりを読んでみて、誤植や文がつながっていないことだという。また、言葉の定義が、二義的、三義的で、きちんとなされていないものもダメ。
どんな本を読めば良いのかに関しては、本をきちんと読んで書評している人を参考にすること。中には本を読まずに書評を書く書評家もいるらしく、そういう者が書く書評には「」書きの引用がないという。なるほど!(笑)
信頼できる書評家として、池上彰氏、手嶋龍一氏、竹内薫氏、竹内久美子氏、副島隆彦氏の名前を挙げていた。
頭に負荷をかけないとダメ。8割の力でこなしていると、どんどんパフォーマンスが落ちて行くので、自分で限界と思うところから常に1割の負荷をかけるべきだと。
佐藤氏は、5~6種類の違うジャンルの本を読むという。読むことに疲れてきても、本の品目を変えて読むと、頭の隙間に入っていくのだと。月に200冊~500冊の本を読むそうだが、1冊5~10分という超速読で読んで、これはもう少し詳しく読む本、これは問題のある本という選り分けをしている。その中で丁寧に読む本は2、3冊だという。
ベストセラー本は読むようにしている。百田尚樹氏の作品は、独自の文体がないのだという。それは作品ごとに思想が違ってくることを意味するが、必ずしも悪いことではなく、その作品ごとに想定している読者が異なるためだと分析。
マルクスの資本論は、1~3巻は注に注がついているというような入れ子構造になっているが、4巻以降は普通の役所の報告書になっている。これは1~3巻はマルクス自身が書いたが、4巻以降は弟子のエンゲルスが書いたため。
昔、井上ひさし氏に言われたのは、やりたいことをすべて書き出し、作家人生を見据えて優先順位をつけて書くべしということと、編集者は出版社各社ごとに付き合いなさいということだという。
最後に、佐藤氏からあったお願いは、本を買ってくださいということ。本を買うことが知的な世界をさせているのだと。人間はケチだから、お金を払って買った本じゃないと身につかない。
また、図書館関係者にお願いしたいのは、ベストセラーは複数の部数を購入することと、発売から半年おいてから購入することだという。
以上、私は聞き取れた限りにおいて、講演を再現してみた。誤解、聞き間違い等があると思われるが、その点はご容赦願う。
いずれにしても、講演タイトルの名に恥じない知的興奮を覚える内容だった。貴重な時間をありがとうございました。