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「知」の読書術 公開ライブ [読書法]

 昨年に引き続き、東京国際ブックフェアに参加した。今回の目玉は、作家・佐藤優氏による講演『「知」の読書術 公開ライブ』を受講することだった。

  この講演には、主催者側の予想を超える2500名もの受講申し込みがあり、急きょサテライト会場を設け、そこでは佐藤氏の講演の様子をカメラで写した映像を同時中継するということになったのである。

  早めに会場に行って並ばないと、生の佐藤氏を見ることができないのでは、と焦った私は、ブックフェア等の探索も早々に切り上げて、開演の2時間ほど前には会場前に行って、並んでいた。

 その甲斐あって、前から2列目の真ん中あたりという好位置のシートを確保することができた。これで佐藤氏のご尊顔を間近で拝むことができると、ワクワクしながら講演が始まるのを待っていると、佐藤氏はステージの左側に立って、正面のスクリーンにその姿が大写しされるスタイルだった。これには拍子抜けした(笑)

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 さて、その講演内容だが、今、話題の本ということで、『絶歌』を取り上げられた。犯罪者の書いた本を出すべきじゃないとなると、私自身も犯罪者だから、と笑いを取っていた。重罪犯とそれ以外を区別するのは難しいので、犯罪者の書いた本を出版することを止めるのは難しい。たとえ、太田出版が出さなくても、ほかの出版社が出しただろうと。

 本として出版されるのは、編集者がこのテキストには力があると感じることと、出版社がこの本は売れると感じることが必要とのことで、『絶歌』にはそれがあったという。ただ、著者の元少年Aは、自分のことを被害者だと思っている節があり、引き続きケアが必要な危険な人物だとおっしゃっていた。

 そして、『絶歌』と対比する作品として、窪美澄著の『さよなら、ニルヴァーナ 』を勧めていた。

 今日講演を聞きに来られた人々は、「読書人階級」に属しているとおっしゃる。つまり、インテリゲンチアだと。自分の置かれた状況を、客観的に、自分の言葉で表現できる人のことだそうだ。

 出版業界は、返本率が4割と、事業としては異常。佐藤氏は、返本されて断裁されないように、初版は抑え目にしているそうだ。

 世の中には読むに値しないでたらめな内容の本がある。そういう本の見分け方は、真ん中あたりを読んでみて、誤植や文がつながっていないことだという。また、言葉の定義が、二義的、三義的で、きちんとなされていないものもダメ。

 どんな本を読めば良いのかに関しては、本をきちんと読んで書評している人を参考にすること。中には本を読まずに書評を書く書評家もいるらしく、そういう者が書く書評には「」書きの引用がないという。なるほど!(笑)

 信頼できる書評家として、池上彰氏、手嶋龍一氏、竹内薫氏、竹内久美子氏、副島隆彦氏の名前を挙げていた。

 頭に負荷をかけないとダメ。8割の力でこなしていると、どんどんパフォーマンスが落ちて行くので、自分で限界と思うところから常に1割の負荷をかけるべきだと。

 佐藤氏は、5~6種類の違うジャンルの本を読むという。読むことに疲れてきても、本の品目を変えて読むと、頭の隙間に入っていくのだと。月に200冊~500冊の本を読むそうだが、1冊5~10分という超速読で読んで、これはもう少し詳しく読む本、これは問題のある本という選り分けをしている。その中で丁寧に読む本は2、3冊だという。

 ベストセラー本は読むようにしている。百田尚樹氏の作品は、独自の文体がないのだという。それは作品ごとに思想が違ってくることを意味するが、必ずしも悪いことではなく、その作品ごとに想定している読者が異なるためだと分析。

 マルクスの資本論は、1~3巻は注に注がついているというような入れ子構造になっているが、4巻以降は普通の役所の報告書になっている。これは1~3巻はマルクス自身が書いたが、4巻以降は弟子のエンゲルスが書いたため。

 昔、井上ひさし氏に言われたのは、やりたいことをすべて書き出し、作家人生を見据えて優先順位をつけて書くべしということと、編集者は出版社各社ごとに付き合いなさいということだという。

 最後に、佐藤氏からあったお願いは、本を買ってくださいということ。本を買うことが知的な世界をさせているのだと。人間はケチだから、お金を払って買った本じゃないと身につかない。

 また、図書館関係者にお願いしたいのは、ベストセラーは複数の部数を購入することと、発売から半年おいてから購入することだという。

 以上、私は聞き取れた限りにおいて、講演を再現してみた。誤解、聞き間違い等があると思われるが、その点はご容赦願う。

 いずれにしても、講演タイトルの名に恥じない知的興奮を覚える内容だった。貴重な時間をありがとうございました。


タグ:講演
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