エジプト十字架の謎 [ミステリー]
〈国名シリーズ〉第5作である本作は、「T」の文字をモチーフとした連続殺人事件にエラリー・クイーンが挑む。私にとってはおよそ30年ぶりくらい再読となる。
したがって、ストーリー自体はすっかり忘却の彼方へと追いやられているため、新鮮な心持で読み進めることができたが、エジプト十字架(タウ十字架)をモチーフにした殺人事件だというエラリーの当初の見立てが誤りだったということだけは記憶に残っていた。
エラリーをして「ここまでこんがらがった事件は初めて」と言わしめた本事件だが、終盤の推理が終盤の推理が見事なくらいにシンプル過ぎて、唖然としてしまった(笑)連続殺人の捜査状況は芳しくなく、犯人の掌の上で踊らされている印象は否めなかったエラリーだったが、最後に一発逆転サヨナラホームランを放ったかのように鮮やかな名推理。
アメリカ大陸を縦断する大追跡劇の末の犯人確保は、エラリーものとしては珍しい大活劇で、さながら「エラリー・クイーンの冒険」といった感じだった。一方で、ホテルに伝言を残しつつの追跡劇に時代性も感じる。今なら携帯ですぐに連絡が取れるわけだが・・・。
でも、鑑識などによる科学的捜査が進んでいる現代であればまず起こりえない事実誤認も、この時代ならではのトリックとして十分楽しめた。
それにしても、エジプト十字架を持ち出して、暴走気味の推理を展開するエラリーを時に諫め、時に叱咤激励して捜査の軌道修正させるあたり、かつての恩師ヤードリー教授とエラリーのコンビは、クイーン父子に勝るとも劣らない名コンビなのではなかろうか。
魔神館事件 夏と少女とサツリク風景 [ミステリー]
迷探偵・白鷹黒彦の事件簿第1弾。
嵐により外界から隔絶された洋館。そこで発生する連続殺人事件。舞台設定としては申し分ない。
圧倒的な暴力により殺害される被害者たちは悲惨です。とても大掛かりな、そして、極めて凶悪なトリック。想像の上を行く驚愕の犯人像に唖然とする。
ちょっと頼りない迷探偵・白鷹黒彦の暴走気味の推理。謎の多い博士・犬神清秀と天然キャラのその妹・果菜。彼らが程よいスパイスとなっているバカミス的ストーリーが、読んでいてハラハラさせられ、思いの外楽しかった。
私にとっては、村崎友著『風の歌、星の口笛』以来の大がかりなトリックに出逢ったという印象です。
神様ゲーム [ミステリー]
講談社ミステリーランド作品。
かつてこんな探偵がいただろうか?神様が探偵役だなんて、よくそんな反則技を思いついたものです。何しろ神様ですから、どんなことでもお見通し。いや、ヘタをすると自分の望むがままの結果を用意することもできるのかもしれない。超絶的探偵です。
事実のすべてを告げていないにしても、その言葉に嘘はない。推理も何もあってものではない。でも、そうは言っても、何かしらのトリックがあるに違いないと目を凝らして読み進めましたが、何とまさかのトリックなし?唖然、呆然(笑)。
芳雄少年が辿り着いた結論は筋が通っていますが、神様が下した天誅は・・・??
これは型破りのミステリー?いや、クライムノベルか?
後味がちょっと悪いのは、麻耶氏の持ち味でしょうか。
悪女は自殺しない [ミステリー]
「本が好き!」という献本プレゼントで頂戴した本作品。
物語の序盤で発見された男性の自殺体。彼はハルデンバッハ上級検事という警察サイドの大物だった。そして、ほぼ同時期に発見された若い女性の遺体。こちらも一見、自殺体のように見受けられるが、死亡した女性の名はイザベル。彼女は、周囲の多くの人々に疎まれていたという。つまり、殺される理由には事欠かない人物。巻末の解説によると、本作品の原題の直訳は「いけすかない女」とのことだから、ある意味、彼女こそが本作品の主人公といえるのかもしれない。
この二人の死に何かつながりがあるのか?というのが当面の謎なのだが、警察はしばらくの間、イザベルの死の真相究明に注力する。
登場人物が皆、嘘つきばかりで、そのために翻弄され、真実に近づいたと思っても、まだ何かパズルのピースが足らず、真相が解明されないもどかしさ。でも、ハイデルバッハとイザベルの死がつながったときに、事件は意外な広がりを見せていく。そのストーリー展開に引き込まれ、なかなか楽しめた。
それにしても、この著者の作品を読むのはこれが初めてであり、妙なユーモアというか、苦笑を誘うようなエピソードが所々に挟まれていたのだが、これがこの著者の作風なのだろうか?
その最たる例である、独断専行的に行動し、無実の人を犯人扱いして投げ飛ばされたり、挙句の果てには容疑者に襲われ、拳銃まで奪われたりしたオリヴァー主席警部という人物は、まったくのダメ人間のように私には映った。
これは『刑事オリヴァー&ピア・シリーズ』というシリーズものの第一の事件らしいが、その後の事件の捜査過程に不安を感じてしまった(笑)
- 作者: ネレ・ノイハウス
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2015/06/12
- メディア: 文庫
幻冬舎plus × ブクログ [ミステリー]
消える短編小説 [ミステリー]
泡坂妻夫著『生者と死者―酩探偵ヨギガンジーの透視術』の 「消える短編小説」を読み始めました。まずは短編小説の「消える短編小説」の方から。
この文庫本は数ページを袋とじになっているので、袋とじのままでは1ページの厚さがかなりあって、しかも当然の如くページ数は飛んでいるので、読み飛ばしているのではないかと不安に苛まれます。(笑)
「消える短編」 はその名のとおり短編小説なのですぐに読み終わりましたが、モヤモヤ感が残りました。
謎は謎のままに、という感じですかね。何も解決しないという蛇の生殺し状態。
でも、袋とじを切り開いた時に現れる長編小説につながる伏線が色々と張られているような気もしますし・・・www
何はともあれ、長編小説「生者と死者―酩探偵ヨギガンジーの透視術」の方へと移行したいと思います。
それにしてもこの袋とじのページを切り開く作業は結構面倒ですね!(汗)
ナイフ等を使わず、素手で行おうとするとページを破いてしまいそうになったので、通勤電車の中で切り開くことは諦めて、帰宅してから慎重に作業しました(笑)
生者と死者―酩探偵ヨギガンジーの透視術 [ミステリー]
大雪のため1時間ほど定時よりも早く退社して帰宅してみる、Amazonさんから『生者と死者―酩探偵ヨギガンジーの透視術』が届いていました。
こんなに悪天候の日に申し訳ないという気持ちになってしまいます。
さて、この本、決して発注を間違えて2冊届いたわけではありませんよ(笑)
この文庫本は袋とじになっていて、袋とじのまま読むと短編小説の「消える短編小説」ですが、袋とじを切り開いて読むと長編小説の「生者と死者」が現れるという仕掛け本なのです!
そのトリックを暴くため、2冊購入して現場検証しようと思っている次第ですwww
『殺人者と恐喝者』の配送 [ミステリー]
カーター・ディクスン著『殺人者と恐喝者』の新訳版が出たので、楽天ブックスで注文しました。
それが宅配便で今日届いたのですが、日中降った雨によりダンボールのケースが濡れてしまい、中の本も湿気を帯びて表紙などが波打う状態になっていました。
楽天ブックスの送付用のダンボールケースが、文庫本を送るにしては大きすぎて、郵便受けに入りきらず、はみ出してしまうのがすべての敗因です。
少なくとも文庫本1冊を送る場合には、今のケースのふた回りは小さいケースで十分だと思うのですが・・・。
この怒りをどこにぶつけて良いものやら。
「Yonda?CLUB」の終了 [ミステリー]
新潮文庫の読者プレゼント「必ずもらえるYonda?CLUB」が、1月24日の応募締切をもって終了するということで、慌てて家中の新潮文庫を探し出し、応募券をかき集めましたが、ジッパー付ブックカバーをもらうにはどうしても2枚足りない。
そこでやむなく?新潮文庫を2冊購入しました。
竹内雄紀著『悠木まどかは神かもしれない』とポール・オースター著『幽霊たち』の2冊。
どちらも帯には「ミステリー」あるいは「推理小説」という言葉が使われていたので購入したのですが、当たっていますでしょうか?(笑)
遠まわりする雛 [ミステリー]
- 作者: 米澤 穂信
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2010/07/24
- メディア: 文庫