ひなた弁当 [小説]
突然のリストラにより会社を追われ、徐々に生活が荒んでいく主人公の姿は読んでいても胸が痛む。
そんな主人公が始めたのは地産地消、いや、地元に自生している植物や川魚などの食材を用いた弁当屋だった。『ひなた弁当』とは良いネーミング。
理不尽な仕打ちを受けた元の会社に対するリベンジに執念を燃やすのではなく、まったく新たな世界に挑み、自ら窮地を乗り越える姿に清々しさを感じる。
でも、わざわざ辞めさせられた会社に出向いて弁当の営業をかけた時にはよせばいいのにと思ってしまった。それが唯一リベンジのようにも思えたが、本人にはそんな意識はなく、純粋に注文販売をさせてもらえないかというビジネスチャンスを求めての行動だったのがまた良い。
人に裏切られ、会社・同僚との縁を強制的に断ち切られた主人公を救ったのが何気ない人の縁だったというのが逆説的な寓話のようだ。
世の中、利己的な心では気づけないことが多いのかもしれない。
コメント 0