ほしのこえ The voices of a distant star [SF]
ほしのこえ The voices of a distant star (MF文庫ダ・ヴィンチ)
- 作者: 新海 誠
- 出版社/メーカー: メディアファクトリー
- 発売日: 2009/12/23
- メディア: 文庫
かつて新海誠さんのアニメ作品を観て感動し、次に佐原ミズさんのコミック版を読んでアニメとはちょっと異なるエンディングにまた感動し、そして最後にこの大場惑さんの小説版たどり着いたという一人メディアミックス。
「わたしはね 懐かしいものがたくさんあるんだ」 アニメの映像を思い出しながら読み始めました。
ミカコが突然「タルシアン」と呼ばれる異生命体の探査隊にスカウトされたため、離ればなれになったミカコとノボル。
ミカコはノボルに対して当初から恋心を抱いていたようですが、どうもノボルはそうでもなかった様子。「ぼくらって、どういう関係なんだろう」などとつぶやいているぐらいですから。
ただ、仲の良い友達が突然に目の前からいなくなり、戸惑っているという感じでした。でも、「少なくともいま長峰は、ぼくを必要としている」ということだけは、しっかり認識しています。
それからは携帯電話が二人をつなぐたった一本の糸となります。
月、火星、そして太陽系外と、どんどん地球を離れていくミカコは「これ以上どこともしれない遠い宇宙へなんか、行きたくない。」と胸の内をつぶやきます。
ミカコが通っていた中学校の制服姿で有人探査機トレーサーに搭乗していることで、時間的には彼女の気持ちが中学時代で止まっており、空間的にはノボルのいる地球に固定されている状態を見事に表現していると感じました。
「わたしたちは、まるで宇宙と地上に引き裂かれた恋人みたい。」というミカコの言葉にこの物語のすべてが凝縮されています。そう、これは宇宙規模の超長距離恋愛の物語。
「生きなきゃ。思いが時間と空間を超えて、ノボルくんに届くまで」という一心でミカコは戦い続けます。そして、・・・。
イラストが竹岡美穂さんだということは知らずに購入しました。もっとイラストが入っているのかと思いましたが、その点は残念。
どんどん遠のく二人の距離。それと反比例して募る思い。タイムラグがありなかなか届かない返事。不安になり焦る気持ちという状況を、携帯電話というありふれた小道具をこのような宇宙を舞台にした物語で効果的に使うアイデアが今から見ても斬新で秀逸だったと思います。
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