就活中の学生さんへ [新書]
就職活動中の大学生らにアンケートしたところ、21%が「本気で死にたい、消えたい」と考えていたという調査結果を目にしたことを、この塩野七生著『日本人へ 危機からの脱出篇』を読んでいて思い出しました。
この本で塩野氏は、「入社試験に失敗したときにまず考えるべきことは、その会社があなたを必要としていないからと言って、社会までがあなたを必要としていないのではない、ということである。/ゆえに、内定をもらえなかったというだけで、あなたの人格までが否定されたわけではまったくない、ということだ。」(P.63)と内定をもらえずにいる学生諸氏を励ましています。
でも、ここで留まらないところが塩野氏らしいところ。
しかし、と続きます。
「内定をもらえないで悩みあせっているあなたは、社会を恨む前に、自分自身の欠陥は考えないのか」(P.66)と。
反省を求めることの第一として、「入社試験に限らず、拒絶されるということへの反応が過剰すぎると思える。言い換えれば、社会から拒絶されることに慣れていないのではないか、ということ」(P.66)、 第二として、「これまた今の大人の性向になっている安定志向である。もはやこれからの世界は、安定の時代ではない。終身雇用などは、あったとすれば奇跡、と考えた方がよい。」(P.67)ということを挙げています。
そして、「そこそこの才能と、一般的な社会の傾向に捕われない発想力の転換と、若いからこそ持てる、蛮勇と言ってもよい勇気。また、安定などはなくてもいいや、という居直り。/そして、何よりも、一会社が必要としていなくても、それは社会があなたを必要としていないというとこではないという、現実的で冷徹な信念。/これらのことさえあれば、どうにかなりますよ。」(P.67)と励ましています。
わたし自身もなかなか就職先が決まらず、悶々とした日々を送った経験を持つ身なので、今、まさに就職活動に取り組んでいる学生諸氏には希望を持って頑張って欲しいです。
日本人へ 危機からの脱出篇 (文春新書 938)
作者: 塩野 七生
出版社/メーカー: 文藝春秋
発売日: 2013/10/18
メディア: 新書
日経新聞を「早読み」する技術 [新書]
毎朝のように目を通してはいる日経新聞ですが、その情報を十分に理解できているかというと甚だ心許ないため、本書を手に取りました。
本書を読み終えて、まずは全体をザッと眺めて、自分が気になるなと思う記事を見定めるというところから初めてみたい。
また、第3章の「5分で分かる!スラスラ読むための知識」は、今後日経新聞の記事をより深く理解する上で参考になりそうです。
それにしても、イスラム金融では、イスラム教の教理から金利の徴収は許されないということを初めて知り驚きました。
【目次】
序 章 日経新聞を読む理由
ビジネスに役立つ;資産を増やす、投資に役立つ ほか
第1章 「早読み」する技術
ビギナーなら1日15分の「日経新聞タイム」を確保しよう
最初に読むのは、読みたい記事で、わかる記事 ほか
第2章 紙面から上手く情報を引き出すための知識
2011~12年、ビジネスと投資に関係する最重要経済ポイント
先進国共通の問題は景気回復 ほか
第3章 5分で分かる!スラスラ読むための知識
5分で知ったフリができる「日本銀行」
5分で知ったフリができる「日銀総裁」 ほか
日本人へ リーダー篇 [新書]
先日読んだ潮野七生著『日本人へ リーダー篇』の中で、9.11当時のブッシュ政権が、テロは戦争であると規定したことが大きな誤りであるとしている。「戦争ではなく、犯罪とすべきであった。なぜなら、戦争だと規定すると、敵とされた側、この場合はイスラム教徒たち、を団結させてしまうからである。」と。
ウィキペディアによると、世界の宗教の信者数は、キリスト教が20億人(33%)、イスラム教が13億人(22%)だそうである。この教会の牧師は、20億人対13億人の闘いを始めるつもりなのだろうか?
一部の先鋭化した人間の暴走だと言えれば良いのだが、教会という一つのコミュニティが行おうとしていることので、そうとも言えないところが問題。アメリカ人の意識の中に根強く横たわる感情の表れとするほうが素直な見る方だろうか?これもひとえに一神教徒であるが故のことであろう。
塩野氏は、この著書の中で、一神教徒である人々からすれば、八百万の神々を信じているような日本の多神教は宗教ではないと言うだろうが、「一神教と多神教のちがいは、一人と多数という神の数にあるのではない。最も本質的なちがいは、一神教には他の神々を受け入れる余地はないが、多神教にはあるというところにある。要するに、他者の信ずる神を認めないのが一神教で、認めるのは多神教なのだから。」と論破している。
すなわち、日本人には、多神教ゆえの「寛容」があるというのである。多神教時代のローマ人も、これをクレメンティア(寛容)と呼んでいたそうだ。
これからの時代、「寛容」が一つのキーワードになるのかも知れないと感じた。
- 作者: 塩野 七生
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2010/05/19
- メディア: 新書
ポケットの中の宇宙@アニリール・セルカン [新書]
★目次★
第1章 タイムマシンに乗って
第2章 宇宙のカタチ
第3章 インフラフリーとライフデザイン
第4章 インテリジェントに関する短い話-科学的な態度とは
第5章 未来を旅する
エッセイ集
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本書の著者であるアニリール・セルカン氏の博士号が取り消されたという記事。
本書には、子どもの頃にタイムマシンを造ろうとした話があったり、宇宙エレベーターの話があったりと、いろんなことが盛りだくさんに書かれていて、なかなか愉しく読ませてもらったのに・・・。
こんなことがあると、すべてが嘘っぽく思えてきてしまい、それが残念でならない。
きっと彼が書いていることの中には真実もたくさんあるのだろうと思えるのだ。
自身が本書の中で書いている。
「失敗するということは、単純に練習や経験が足りないからだと理解しています。失敗することによって、「次はどうしたらいいのか」を考えることができる。だから、失敗はつぎにすすむうえで、重要なファクターとなっています。」
と。この言葉を今は彼に贈りたい・・・。